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企業の声

無線からAIへ!静岡から描く次世代ドラレコの未来

ドライブレコーダーや車載カメラで知られる株式会社ユピテル。東京に本社、愛知県岡崎市と鹿児島に技術拠点を持つ同社が、2019年に静岡市内に研究所を開設しました。全国各地から企業誘致のオファーが届く中、なぜ静岡市を選んだのか。またその後、どのような成果を生み出しているのか。同社の代表取締役会長 兼 CEO 安楽憲彦様に、静岡市への進出経緯と今後の展望をお聞きしました。

無線からドライブレコーダーへ。時代と共に進化する車載機器メーカー

ユピテルという会社は、以前から無線関係が強い会社でした。今はカメラ関係、ドライブレコーダーが主流になっています。特に2024年から市場投入した暗視カメラ機能を搭載したドライブレコーダーは、暗いところでも鮮明に映像を記録できるだけでなく、AIが映像をその場でリアルタイムに解析し、人物を検知する機能も備えています。データをクラウドに送ってから判断するのではなく、デバイス本体の中にAIを組み込んで処理するというのが私たちのこだわりの技術です。

「地のりがいい」場所でのIT拠点立ち上げ

ユピテルとしての静岡への進出は2019年になりますね。ただ、50年ほど前からグループ会社が静岡市に拠点を持っていましたし、今から20数年前には、静岡市でEC販売の会社を立ち上げていました。そのため、静岡との縁は非常に長いです。

研究所を静岡に作った理由は二つあります。一つ目は、地理的な優位性です。本社が品川、技術拠点が愛知と鹿児島。その間に位置する静岡は、非常に地のりがいい。他拠点へのアクセスを考えたとき、研究所の立地として静岡が一番良いと判断しました。

二つ目めは、IT領域への挑戦です。当社はこれまで機器のソフトウェア・ハードウェア設計はやってきましたが、IT関連は全くやってこなかった。グループ会社が20数年前からインターネットビジネスに取り組んでいましたし、であれば静岡でもっとITに近いことをやろうということで始めました。

研究所の設計段階から、IT関連に興味のある外部の企業の方々が一緒に入って使えるような部屋を作りました。3社くらい入ってもらえる広さにしてあって、いわば「シズコンバレー」とでも呼ぶべきオープンな拠点にしようと考えていました。それが1号棟の研究所のスタートです。

静岡市を選んだ決め手は「熱量」

本音を言うと、企業誘致ってオファーが各地から来るんですよ。静岡県からも、静岡市からも、それから北海道や東北といった他の地域からも声をかけていただきました。日本中のお誘いから選んだのが静岡市です。決め手は、静岡市の担当者の方々の熱意でした。特に難波市長は非常に熱心で、あんなに細かく直接お話ししてくれる市長は他では見たことがないほどです。

日本全国で拠点を展開してきましたが、やっぱりすごくいいところだと思います。市の方々の熱心なアプローチを受け、背中を押されました。何より「こんなにサポートしてくれる市はない」と断言できるくらい、企業が進出しやすい環境が整っています。非常に進出しやすい市だと思いますよ。

職員の方々には、当社の東京の事務所への訪問をはじめ、規制への対応や立地条件についての説明など、積極的かつ丁寧に対応していただきました。工業団地へ入る形の誘致は割と多いんですが、私たちのように自分たちが希望するという場所に入ろうとすると規制がいろいろあります。その規制を取り払おうと静岡市の方々が伴走してくださり、とても助けられました。

企業を誘致する上で重要な補助金の面でも、静岡市には大変協力していただいています。1号棟の際に約9,000万円、2号棟の建設時も含め、これまでの累計で約4億4,000万円の補助をいただいています。研究所の整備や設備投資の費用を大幅に抑えられたことは、意思決定を後押しするひとつの大きな要因です。

多角的に静岡を盛り上げる取り組み

開所にあたり、インドから新卒を8名採用し、愛知と鹿児島の技術者も移ってきてもらい、研究所をスタートさせました。インドから来てくれた彼らの中には、今も静岡に住んでおり、結婚して家庭を持った人や、自動車免許も取得して自立した生活を送っていたりする人もいます。また、鹿児島の技術センターへ異動して活躍してくれているメンバーもいたりと彼らの活躍を嬉しく思いますね。

地域との関わりという面では、静岡新聞社様と共同で女子プロゴルファーを目指す方に向けたステップアップツアーを、初回開催から11年にわたり継続開催しています。このツアーは毎年6月に開催し、プロ資格を目指すアマチュアや一線のプロ選手も参加する本格的な競技大会で、今年で11回目を迎えます。

また、静岡市水産振興課とのコラボレーションとして、静岡市の水産物のプロモーション映像にユピテルプラス公式バーチャル広報社員YouTuber「葵わさび」を登用いただき、地域の魅力発信に貢献しました。この映像は市内の小学生向けの授業にも活用されています。

さらに、当社は次世代のIT人材育成にも取り組んでいます。研究所の敷地にはただ単に芝生を張って広くしているのではなく、グループ会社であるユピテルプラスのメンバーが研究しているAR(拡張現実)技術を設置し、見学に来た子どもたちが実際にARを使ってゲームができるような環境を整えています。「IT関連の勉強をするとこんなことができるよ」と見せると、小学生の子どもたちは夢中になってゲームをやって帰りたがらないほどです。

また、小学生向けのロボット教室を「札の辻クロスホール」で開催したこともあります。私自身、子どもを集めて勉強してもらうのが好きなんです。やはり子どもの頃に興味を持ってもらわないと、大きくなってからこうした技術の仕事をやりたいとは思わないですからね。

「一度住んだら、離れられない」

住環境は非常にいいです。私自身、静岡市に住んでおり、東京へ行く時も新幹線で品川まで50分。また、FDA(フジドリームエアラインズ)の就航で、富士山静岡空港から鹿児島へのアクセスも格段と便利になりました。中部国際空港を使えば海外の取引先に出向くのも、以前より効率的になりました。

転勤で静岡に来た方々がよくおっしゃるのは「静岡に転勤で来て、他の地域に異動しても、定年になったらまた静岡に戻りたい」ということ。一度静岡に住むと、他の地域には住みたくなくなるようです。それぐらい、良いところです。朝起きてベランダに出たら富士山が見えるんですから。温暖で、雪もほとんど降らない。夏もそれほど暑くない。食べ物も美味しい。最高じゃないでしょうか。

「商品にAIを組み込む」独自技術の深化

今後の方向性のひとつは、AIを商品の中に組み込んでいくシステムの確立です。一般的にAIというとデータセンターにデータを送って処理するイメージがありますが、私たちが目指しているのは商品の中にAIを組み込むこと。これは最初からの狙いでした。デバイス単体でリアルタイムに映像を解析し人物を検知するといった技術は、すでにドライブレコーダーへの搭載が始まっており、この分野をさらに深化させていく方針です。

カメラ関係の事業拡大も重要なテーマです。暗視カメラ技術はドライブレコーダーへの搭載が始まっていますが、今後はさらに多様な分野への展開が見込まれます。静岡研究所は先端技術の入口として、ここで研究した成果を愛知・鹿児島の技術センターへ展開し製品化するというフローの起点を担います。

ユピテルの成長において、静岡研究所の役割はますます重要な位置を占めています。静岡という場所が持つアクセスの良さ、市の熱心なサポート、そして住環境の豊かさが、これからもユピテルの成長を支え続けてくれるに違いありません。

株式会社ユピテル 代表取締役会長 兼 CEO 安楽憲彦様

※本記事の内容は令和年2月時点の情報です。

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