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企業の声

創業115年 若手が担う次なる100年へのバトン

静岡市で創業115年を誇る株式会社小池弥太郎商店。歴史ある金属加工業である同社は、新工場への移転を機に「自動化による高付加価値化」や「若手社員主導のオフィス作り」を実現させました。

行政と二人三脚で歩んだ移転集約プロジェクト、そして地方都市・静岡だからこそ実現した働く環境の改善や採用面への効果について、代表取締役の小池祐一郎様、社長室室長の小池一之様、管理部部長の植松洋介様にお話を伺いました。

建物を雨風から守る、金属加工のプロフェッショナル

(代表取締役)
当社は、主に建物の屋根や外壁に使用される金属素材の加工・販売を行っております。屋根や壁において最も重要な役割は、雨風を防ぐことにあります。雨漏りを防ぐためには、素材に「つなぎ目」がないことが理想的です。そのため、長さがある建物であれば、材料の金属の長さを維持したまま加工して現場へ届ける点が、当社の大きな特徴です。

こうしたビジネスの性質上、広大な作業スペースが不可欠となります。加工した製品を保管し、さらにそれを大型トラックで現場まで円滑に運び出す。この「スペースの確保」と「運搬」が、当社の成長を支える生命線といえます。

課題解決に向けた三拠点集約の決断

(代表取締役)
長らく、当社は静岡流通センター内に3つの拠点を分散して構えていました。しかし、拠点が分かれていることで業務効率が低下し、周辺道路で路上駐車の問題なども発生していました。これらの課題を一気に解決し、生産効率を最大化するために、拠点の一箇所集約を決意しました。

移転にあたって最大のハードルとなったのは、土地の確保です。当社のビジネスには、製造スペースに加え、大型トラックの待機場所や積み込みスペースを含め、約6,000坪というまとまった土地が必要でした。政令指定都市である静岡市内において、これだけの規模の平坦な土地を見つけることは容易ではありませんでした。今回は行政の方々のサポートのもとで高度化事業という形で、移転が実現しました。
¹高度化事業: 高度化事業は、中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)と都道府県が一体となって長期・低利の資金貸付と診断・助言を行う支援制度

 また、候補地がヘリポートに近接していたことから、航空法による建物の高さ制限があるという特有の制約もありました。しかし、私たちはこれを逆手に取り、建物を建てられないエリアをトラックの待機場所や積み込み場として活用することで、土地の有効利用を図りました。

さらに、今回は「ゼロから工場を建てる」という初めての挑戦でもありました。工場の現場、事務所、倉庫など、あらゆるセクションの従業員と対話を重ね、いかに効率的な動線を組むか。その設計には、時間をかけて議論を尽くしました。

しかし、こうした局面で大きな力となったのが、静岡市の企業立地担当の皆様によるサポートです。行政の立場から一方的に指示を出すのではなく、常に我々民間事業者の視点に立ち、親身になって寄り添ってくださいました。

新社屋外観

静岡市のサポートにより複雑な手続きや調整も円滑に

(管理部 部長)
この大規模な移転プロジェクトが実現したのは、静岡市および静岡県の強力なバックアップがあったからこそです。

特に「高度化事業」の活用においては、行政側の細やかなサポートが不可欠でした。サポートは大きく分けて「事前審査フェーズ」と「申請手続きフェーズ」の二段階で進められました。

事前審査

申請段階では、静岡県、静岡流通センター組合、メインバンク、デベロッパー、そして静岡市の企業立地担当が一堂に会する定例会を毎月開催していました。どう進めるべきかを行政の観点から具体的にアドバイスいただけたことで、調整事項を一つずつ確実にクリアすることができました。

申請手続き

工場立地法や立地促進事業の補助金申請においても、静岡市の担当者に非常に親身に対応いただきました。過去の事例をもとに、注意点やスケジュールのポイントを的確に教えていただいたおかげで、最適な時期での申請が可能となりました。

つなぎ役としての信頼感

民間企業にとって、行政の組織図は複雑に見えるものです。しかし、「何かあればまずは企業立地担当へ」という信頼関係があったことが非常に心強く感じました。担当の方が窓口となり関係部署と調整を行ってくださる、この「寄り添う姿勢」のおかげで今回のプロジェクトを完走できたと考えています。

移転による3つの効果

(代表取締役)
今回の移転によって、当初の予想を超える成果が現れています。

業務効率化と安全性の向上

トラックの待機・積み込みスペースが確保されたことで、人・物・車の動線がシンプルになり、安全性が格段に高まりました。あわせて、これまで人間がフォークリフトで行っていた材料の運び出し作業を、機械式ラックの導入により自動化しました。フォークリフトの運転という重労働を省略できたことで、社員がより付加価値の高い仕事に集中できるようになりました。

オフィス環境も、かつての三階建てからワンフロアに集約。移動の負担が解消されたことで、部署間のコミュニケーションが取りやすくなったと感じます。

第1工場の自動式ラック

採用の手応え

(代表取締役)
特に効果を感じるのは、採用面において確かな強みを得たことです。学生にとって、職場の清潔感や安全性、先進性は非常に重要な判断基準となることを改めて実感しています。

令和7年度は1名だった新卒採用ですが、移転を機に来年度は5名の入社を予定しています。新オフィスに設けたオンライン会議ブースや、こだわりの家具などは、学生の目にも魅力的に映ったようです。「この環境なら頑張れる」という安心感が、採用競争力の向上に直結しました。

「若手主導」が育むオーナーシップ

(社長室 室長)
新工場の設計で最も大切にしたのは、社員の意見です。特に事務所のレイアウトやデザイン、設備の提案は若手社員を中心に行われました。

「10年、20年先もここで働きたいと思えるオフィス」を合言葉に、壁紙や絨毯一枚、椅子一つに至るまで、若手社員に提案してもらいました。業務パフォーマンスや身体的な負担等を考慮したアイデアは彼らが社長へ直接プレゼンし、採用されたものが実際に形になっています。このプロセスを経て、社員の中に「会社を自分事として捉える」という意識が芽生えたことは大きな収穫でした。自分たちの手で環境を整え、その成果を肌で感じたことで、社員が自社の未来に対して期待を持つようになったのは移転当初には予想もしていなかったプラスの側面です。

ビジネスと暮らし両面での良さを実感

(代表取締役)
地方進出を検討する企業の皆様に、自信を持って伝えたい静岡市の魅力が2点あります。

ビジネス面

静岡市は非常に温暖で、冬でも雪が降りません。私自身、北海道に10年ほど住んでいた経験がありますが、雪国では季節によって生活や物流が大きく制限されます。通年でほぼ変わらないビジネス環境を維持できることは、製造業のみならず、あらゆる産業にとって大きなメリットです。

また、日本のほぼ中央に位置し、関東・東海・関西のいずれにもアクセスが良い。特に近年は新東名高速道路や中部横断自動車道の整備が進み、東西だけでなく山梨(甲府)や長野方面への移動時間も大幅に短縮されました。この「ハブ」としての機能は、静岡市の強力な武器です。

暮らしの面

(社長室 室長)
さらに生活環境としては、東京に十数年いた私から見ても「贅沢」の一言に尽きます。海、山、川がすべて身近にあり、週末はサイクリングやキャンプなど、趣味に合わせたアクティビティがすぐそこにあります。

またプロスポーツチームも多く、週末にスタジアムへ足を運び、週明けにその話題で社内が盛り上がる。老若男女が楽しめるエンターテインメントが日常に溶け込んでいることも、社員のワークライフバランスを支える重要な要素です。

「頼られる企業」であり続け、次の100年へバトンをつなぐ

(代表取締役)
当社は創業115年を迎えました。流通センター組合に加入してから50年。そして今回の移転は、次の50年、100年を見据えた大きな節目といえます。

私の目標は、20〜30年後に現在の20代・30代の社員の中から次の経営者を輩出することです。今回の移転で、成長のための「箱(ハード)」は整いました。これからは、その箱を使いこなして成長する「中身(ソフト)」、つまり人を育てていくフェーズとなります。

効率化を突き詰め、全国のどこにも負けないモデルケースとなるような工場を作り上げる。そして、地域社会からも、お客様からも頼られ続ける永続企業として、成長を続けていきたいと考えています。

左から管理部部長の植松洋介様、代表取締役の小池祐一郎様、社長室室長の小池一之様



※本記事の内容は令和7年10月時点の情報です。

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